知的財産ファイナンスとは?マネタイズ法についても解説
金融オンライン
一部で盛り上がりを見せいている知的財産ファイナンス。
「大企業の話なんでしょ?」と思われるかもしれませんが、スタートアップなどの資金力が乏しい企業にこそ聞いて欲しい話です。
この記事では知的財産とは何か、知的財産を活用した融資を受ける方法、その他のマネタイズ方法を解説します。
知的財産を持っていて、資金繰りに困っている企業の方はぜひご覧ください。
きっと資金調達の助けになりますよ。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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目次
そもそも知的財産ってなに?
「知的財産」は知的財産法第2条第1項で下記のように定められています。
【この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。】
つまり、特許権や実用新案などの権利だけでなく、ブランドやノウハウも含まれるということです。
分かりやすいように「知的財産」を具体例で示しましょう。混同しやすい「知的財産権」「知的資産」についても例を挙げて説明いたします。
・知的財産権=特許権、実用新案権、知的財産権など
・知的財産=上記+ブランド、ノウハウなど
・知的資産=上記+人材、技術、組織力など
今回ご説明する「知的財産」は、特許庁が管轄する実用新案権などの権利に、ブランドやノウハウなどを加えたものです。知的資産である、会社の人材や組織力は含まれません。
知的財産ファイナンスとは
知的財産ファイナンスとは、知的財産を用いて投資家や金融機関から資金調達をすることです。
わざわざ知的財産を活用しなくても、財務諸表や事業計画書を提出して審査をしてもらえばいいんじゃないの?と思われるかもしれません。
しかし、スタートアップなどは知的財産を保有していても、有力な担保となる不動産を持ち合わせていません。そのため、財務諸表や事業計画書の審査では融資が通らないことが多いのです。
そこで知的財産を活用した資金調達が役に立ってきます。主な知的財産ファイナンスを2例ご紹介いたします。
知的財産の流動化・証券化
知的財産の流動化・証券化とは知的財産保有者(オリジネーター)が、保有している知的財産をSPC(特別目的会社)に譲渡し、知的財産の収益力を裏付けとしてSPCが借り入れをおこないます。
巨額な不動産でよく使われていたスキームですが、知的財産の流動化・証券化についても注目が集まっています。
しかし、知的財産は不動産よりも評価が難しく、スキーム構築にも高い専門性が必要なため、実績はあまり上がっていないのが現状です。
知的財産担保融資について
知的財産担保融資はその名の通り、知的財産を担保として金融機関から融資を得る方法です。
従来は融資を受ける際は、不動産を担保とすることがほとんどでした。しかし、近年では特許権や著作権などの知的財産権を担保とする融資に対応している金融機関も出てきました。
しかし、トラックレコード(過去の実績)の不足により、知財の担保設定は困難です。
知的財産の担保評価は、外部の専門家の意見を参考にし、金融機関ごとに設定している評価基準で審査をしていきます。
革新的な発明など素晴らしい知的財産を保有していたところで、借入金を確実に返済できると裏付けられなければ、融資を受けるのは難しいのが実情です。
そのため、融資の際は事業計画書を提出するのが一般的ですが、事業計画に知的財産を利用して利益を出し、借入金を返済できますよ。と説明することが求められます。どのように利益を出していくかを上手に説明できれば、審査に通りやすくなるでしょう。
知的財産ファイナンス以外のマネタイズ法
ここまでは知的財産を利用して、投資や融資を得るファイナンスについて説明いたしました。
その他の資金調達として、知的財産を利用したマネタイズ方法を説明します。
知財ライセンシング
知的財産ライセンシングとは、知的財産を他社に供与することにより、一定の対価を得ることです。
自社で知的財産を活用するよりも、他社とライセンス契約をした場合の利益が大きいと判断した場合に検討されるマネタイズ法です。
知財ライセンシングには、知財を貸し出すライセンサー、借り受けるライセンシーの両方にメリットがあります。
ライセンサー(許諾者)のメリット
・ライセンス料の確保
・研究開発費の回収
ライセンシー(実施権者)
・保有していない技術を取得できる
・研究開発の時間・費用の削減
知財譲渡
保有している知的財産を譲渡・売却してしまい対価を得ます。
素晴らしいアイディアだが自社では収益化できない、他社に売却した資金で新たな開発を進めたい時などに、譲渡・売却が行われます。
ここでも知的財産の評価が重要となってきます。
特許庁が無料で知的財産の強みや今後の成長性を評価してくれるサービスがありますので、売却交渉の材料として持っておくといいかもしれません。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/cyuusyou_tsuyomi.pdf
知的財産の評価について
ここまでに説明したように、知的財産の評価はとても難しいです。
融資、企業買収、会計など様々な面での評価が必要になるので、何のために評価するのかによって、計算方法が変わってきます。
主な計算方法は下記の3つです。
・原価法(再調達にかかる費用から価値を算定)
・取引事例比較法(類似の取引から価格を算定)
・収益還元法(将来得られるキャッシュフローから算定)
それぞれに一長一短があり、正確に評価を表しているとは言えません。そもそも、これから収益を生み出していくものの価値を決めることは難しいですよね。
この価値評価の難しさが、知的財産ファイナンスが盛り上がってこない一因であるかもしれません。
まとめ
知的財産が秘めているパワーはご理解いただけたでしょうか。
スタートアップ企業のようにアイディア・知的財産はあるのに資金不足で事業が進まない場合は、知的財産ファイナンスを試してみてはいかがでしょうか。
素晴らしいアイディアを事業計画書に盛り込み、このように利益を出していくんです!と説得力を持って伝えることができれば、きっと融資担当者も考えてくれるはずです。
いままで眠らせていた知的財産をぜひ活用してはいかがでしょうか。