ESG地域金融とは?具体例で分かりやすく解説
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SDGsやESG投資は、企業を運営していく中での重要性が増しています。
これまでは大企業や国が中心となっていましたが、これからは、地方の課題を解決するために、地方の中小企業こそが中心となる必要があります。
今回は、ESG地域金融とは何か、ESG地域金融の具体例などを解説します。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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目次
地域金融とは
地域金融とは、信用金庫や地方銀行のように、地域創生のために行う金融活動のことです。
地域金融の主な業務は、以下のようなものがあります。
- 預金
- 融資
- 為替
これらの業務は都市銀行などと同じですが、取引相手が主に中小零細企業や個人事業主などの小規模な組織であることが特徴です。
取引額も比較的少なく、1000万円以下の取引が大半を占めます。
また、上記のような通常業務の他に、事業継承支援も重要な業務の一つです。
中小零細企業は後継者不足による廃業が増えています。
帝国データバンクの調査によると、2021年時点で企業の後継者不在率は61.5%にも上っています。
ただし、この数値は前年の65.1%から大幅に改善しています。
数値が改善した背景には、地域金融機関によるプッシュ型のアプローチが成果を発揮してきたことが挙げられます。
事業継承など地域金融機関の重要性は再認識されていますが、日本では低金利が続いていることや地方の人口減少などから、地域金融機関を取り巻く状況は厳しさを増しています。
事業継承については、以下の記事でも詳しく解説しているので併せてご覧ください。
https://note.com/somo_fintech/n/nb96c5348d934
地域金融機関に求められるESG地域金融
続いては、地域金融機関を語る上では欠かせない、「ESG地域金融」について解説します。
ESG投資とは
まずは、ESG地域金融の考え方の基となっている「ESG投資」について知っておきましょう。
ESG投資とは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つの要素を考慮した投資です。
通常の投融資では、財務面や将来性など「どれだけ利益を上げられるか」が重要視されていました。
しかし、2006年にアナン国連事務総長が提唱した「責任投資原則(PRI)」により、ESG投資の概念が広がりました。
PRIとは投資家に対して、企業の分析や評価を行う上で、ESGを考慮した投資を求めるという内容です。
世界で最大級の機関投資家である「年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)」がPRIに署名しているため、日本でもESGは投資に欠かせない概念となっています。
ESG地域金融とは
地域金融とは日本の地方では人手不足や高齢化などで、持続可能な企業運営をすることが厳しい状況になっています。そのため、地方でもSDGsやESGに基づく投資が必要とされています。
持続可能な経営を促し、支援するのが信用金庫などの地域金融機関です。
地域が持続可能な成長をするには、地域金融機関が中心となり、地域の隠れた資源を活用して資金の流れを活性化することが大切です。
ESG地域金融では、ESG投資と同じく財務的な指標だけでなく、地域に与える環境や社会性・ガバナンスを考慮して投融資を行います。
ESG地域金融により経営者は資金調達をするために、より地域貢献について考える必要があるため、結果として持続可能な地域を作ることに貢献します。
ESG地域金融のメリット
ESG地域金融は、決して企業の経営者に負担を求めるものではありません。
金融機関の支援などにより後継者不足などの地域の課題を解決することにより、新たなビジネスを作りだしたり、新規顧客の獲得などビジネスチャンスが広がります。
中長期的には、ESGに取り組むことで地域全体が活性化して、持続可能な経営が可能になります。
EDGsやESG投資については、次の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
https://note.com/somo_fintech/n/n88a39031415c
地域金融の具体例
最後に、実際に実施されている地域金融の具体例を紹介します。
広島銀行
広島県は自動車メーカーのマツダの本社があるため、自動車部品のサプライヤーが数多くある地域です。
自動車をはじめとする輸送用機器は、広島県の製造品出荷額の33%を占める一大産業となっています。
しかし、自動車のEV化の流れにより、エンジン車に関連する部品を取り扱う業者は売上減少のリスクが高まっています。
このような状況に広島銀行は地域の持続可能性を確保するために、新事業転換や技術転用を中期的に支援しています。
具体的に効果が出始めていて、取引企業では以下のような取組を実施しています。
- 地元人材の積極採用
- 自動車塗料を揮発性有機物削減できるものへ移行
- ベテラン職人の技術伝承
- 車部品を解体するだけでなく積極的な再利用をする
- 従業員の思想や文化を尊重した勤務体系
上記のようにESGに関連した取組を実施している企業には、広島銀行が積極的に融資をして、ノウハウを提供するなど支援しています。
金融機関と関係が深い「サステナブルファイナンス」については、次の記事をご覧ください。
https://note.com/somo_fintech/n/n94ef2fbc57e4
福岡ひびき信用金庫
福岡ひびき信用金庫が本店を置く北九州市は「SDGs未来都市」に選定されています。
SDGs未来都市とは、地域活性化にSDGsの理念を取り込むことで、地域課題解決を加速させる取り組みです。
北九州市内の企業がSDGsに対する取組と目標を市に提出すると、「北九州市SDGs登録制度」に登録されます。この登録を福岡ひびき信用金庫が支援して、市全体でSDGsを盛り上げていきます。
さらに、登録されている企業に対し新たな融資メニューを創出、企業の魅力発信支援など多岐に渡り支援をする仕組みになっています。
まとめ
地域金融とは、地域発展のために行う投融資活動のことです。この役割は、信用金庫や地方銀行などが担っています。
現在の日本では、少子高齢化や継承者不足などにより、持続可能な発展が困難になっています。
そこで、地域のESG投資を推進することで、地域が持続して成長していくことが大切です。
SDGsやESG投資と聞くと国家規模の取り組みのように感じますが、地方の中小企業の取り組みこそが重要です。自社が継続して成長するためにも、持続可能な地域造りに協力していきましょう。