DX化が困難な金融業界!それでもデジタル化を進めるべき理由とは
金融オンライン
金融DXとは、金融業界におけるDXのことです。
古く伝統がある業界ほどDXの推進が難しいと言われていますが、金融業界は急速にDXが進んでいます。
そこで今回の記事では、そもそもDXとは何なのか・金融DXの具体例などを紹介します。DXは持続可能な企業運営をするために必須ともいえるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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まずは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の意味を知ろう
DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことです。
DXの起源は2004年にスウェーデンのウメオ大学の教授であるエリック・ストルターマン氏が提唱したことに始まります。ストルターマン氏の定義は「ITの浸透が、日々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」です。
DXの概念はビジネスの分野にも入ってきましたが、統一された定義は存在しません。そのため、「単純に仕事をデジタル化すればいい。」と考えてる人も多くいます。
また、一部の専門家は「クロステックはビジネスを革新させるものであり、DXは現在のビジネスを根本から変化させるものである。」と定義しています。
クロステックとは、フィンテックやアグリテックのように特定の分野とIT技術を組み合わせたものです。
経済産業省による定義は、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
となっています。
引用:経済産業省によるDXの定義経済産業省 DX推進ガイドラインより
ビジネスでのDXの定義は曖昧ですが、一部の専門家が提唱している「現在のビジネスを根本から変化させるデジタル化」が他の用語との差別化もできるので、理解しやすいのではないでしょうか。
DXの具体例
言葉だけではDXがどのようなものかイメージしにくいので、具体例を挙げて解説をします。
SNSを利用したマーケティングやブランディング
以前はマーケティングやブランディングは、折り込み広告・店舗の看板・テレビCMなどで行われていました。
もちろん、このマーケティング・ブランディング方法は現在でも実施されていますが、主戦場はインターネットの世界に移っています。
例えば、SNSを利用したマーケティングやブランディングがあります。
コンビニエンスストアのローソンはTwitterで約640万人のフォロワーがいます。
あきこちゃんというキャラクターを利用することにより、親しみやすさのブランディングをしています。また640万人のフォロワーがいるということは、商品の宣伝をつぶやくだけで640万人に直接情報を届けられます。
家電大手のSHARPもTwitterを利用していて、フォロワーが約82万人います。
SHARPのTwitterは、もちろん商品の宣伝もしますが、「今日の夕飯はなに?」など、全然関係のない日常の出来事もつぶやきます。
内容が面白いため、たびたびネット上で話題となっています。話題になれば、これまでにSHARP製品を購入したことが無い人にも関心を持ってもらえるので、新たな見込み顧客を獲得する効果があります。
AR(拡張現実)を利用したBMWの「BMW i Visualiser」
これまで車の購入を検討するには、ディーラーに行って説明を聞き試乗などをする必要がありました。この概念を覆すのがBMWが発表したスマホアプリ「BMW i Visualiser」です。
BMW i VisualiserではAR(拡張現実)を利用して、実寸大の自動車をスマホに映すことができます。駐車場でスマホに映せば、サイズ感を把握可能です。
*引用:BMW公式ホームページより
また、車に近づけば車内の様子も確認できます。トランクを開けたり、ラジオを付けたり、ワイパーを動かしたりと細かい動作もチェックできるので、ディーラーに行かなくても車の細部をイメージ可能です。
*引用:BMW公式ホームページより
金融DXとは
次に金融DXについて解説します。金融DXとはその名の通り、金融業界におけるDXのことです。
金融業界はデジタル技術が発展してきた1970年代~80年代にかけて、他の業界よりも早くIT化に取り組みました。
その際にセキュリティ重視のシステムを作り上げたため、外部との連携が取りにくくなっていました。もちろん金融業界はセキュリティがとても重要なので、当時としては問題ないシステムでした。
しかし、時代が変わるにつれて外部との連携が必須になってきました。例えば、銀行口座と証券口座が連携して即時入金をしたり、資産管理ソフトで全ての銀行の口座を一括管理したりなどです。
硬いセキュリティにより古いITシステムを使い続けた金融業界は、DXが進みにくい業界とされています。
しかし、近年では金融業界でも急速にDXが進んでいます。
日本経済新聞の調査によると、大手金融機関がDXを進めることで4万人規模の業務量を削減できるとの結果が出ています。 参考:日本経済新聞「金融DXで4万人分効率化」
業務量が削減されると、余った人材を配置転換する必要があります。
この配置転換する人材を、どこの部門に振り分けるのか・どのように教育するのかが金融業界の今後の発展を握っています。
金融DXの具体例
ここでは金融DXのイメージをしやすいように、具体例を解説していきます。
北國銀行
石川県金沢市に本店を置く北國銀行は、金融業界の中でもDXを精力的に推進していることで有名です。
北國銀行は2014年に、全社員にノートパソコンのSurfaceを配布しました。これにより外出先でも銀行内と変わらない仕事環境を実現できるので、「どこでも営業店」をキャッチフレーズに営業活動を展開しました。
また、2021年5月には国内初となるクラウドでのフルバンキングシステムを実現しました。銀行には預金・為替・融資など多くの業務がありますが、すべての業務をクラウド化したので「フルバンキングシステム」と呼ばれています。
2021年9月には経済産業省から地方銀行初の「DX認定事業者」の認証を得ました。この認証を得ることにより、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄」の要件を満たせます。
北國銀行はDX銘柄として時流に乗れるので、これからも投資家の注目が集まるでしょう。
リコーリース株式会社
リコーリースは2018年にリース業界初となるリース契約の与信審査にAIを導入しました。リコーリースの得意先は40万社以上あり、月間の審査業務は3万件にのぼります。
リースの申込が入るとリース料を払えるか審査をします。
AIだけで完結できる審査は約30%。社員はAIの活用で浮いた30%の時間を、判断が難しい案件に注力できます。
DXを進めない企業は2025年に崖に落ちる!?
DXを推進しない企業は、2025年に崖に落ちると言われています。
これは経済産業省が2018年に発表したDXレポートで提唱されました。2025年の崖とは主に下記の3点です。
DXを進めないと
①市場の変化に対応できなくなる
②システムの維持管理費がIT予算の9割以上を占めるようになる
③システムの運用担当者の不足によりリスクやトラブルが発生する
*引用:経済産業省 DXレポートより
2025年の崖に落ちてしまうと、日本全体で年間損失が12兆円になると試算されています。
DXを推進するために経済産業省は、DX推進指標という自己診断ツールを提供しています。9つのキークエスチョンとサブクエスチョンが用意されていて、これに回答すると自社のDX成熟度が分かります。
*引用:経済産業省 デジタル経営改革のための評価指標より
経済産業省のDXレポートで提唱されているように、DXが進まない企業は市場の変化に対応できない・システムの管理費が莫大になるなどのデメリットが発生します。
DXを推進しない企業は衰退していくことが目に見えているので、金融業界でもDXが急速に進んでいます。
DXの推進は企業を存続させるために必須だと言えるでしょう。
まとめ
持続可能な経営をするためには、DXの推進が欠かせません。
大きな資金を投入してシステム構築をするDXから、SNSマーケティングのように少ない資金から始められるDXもあります。
DXは一朝一夕にできるものではないので、早い段階で着手することが大切です。DX推進指標をきっかけに自社のDXを進めてみてはいかがでしょうか。