ネット売買のトラブル事例と利用者保護の法案について解説
コラム
ネット通販やフリマアプリの利用者急増に伴い、利用者間のトラブルも増えています。
「ネット通販は便利そうだけど、使うのがちょっと怖い・・」
「個人間の取引はリスクがありそうで心配・・」
など、みなさんも感じた経験があるのではないでしょうか。
そこで今回は、トラブル防止に対する各社の対策や、法整備について解説します。
ネット売買についての知識を増やして、安心して利用できるようになりましょう。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
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ネット売買の現状
現代において、ネット通販やネット上のフリーマーケットなど「ネット売買」は生活に欠かせません。
店舗に行かなくても自宅に届く利便性はもちろんですが、買い物が容易でない地方や障がいなどで外出が困難な方に欠かせないインフラでもあります。
また、ベビーシッターや家事代行のマッチング・電子チケットの売買などの新しいサービスも、広い意味でのネット売買も生まれています。
日本におけるネット売買の市場規模は、毎年5%前後の成長が継続しています。今後もスマホの普及・ITの進化などにより、ますます成長が加速するでしょう。
日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)
出典:経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
ネット売買におけるB2CとC2C
ネット売買には、ネット通販事業者と取引をするB2C(Business to Consumer)と、
個人間で売買するC2C(Consumer to Consumer)があります。
それぞれ具体例を挙げて解説します。
B2C:ネットショッピング
「Amazon」や「Yahoo!ショッピング」「楽天市場」は事業者から商品を購入するので、B2Cのネット売買です。*一部例外あり
取引する相手は事業者ですので、販売システムが確立されていてトラブルは起こりにくいのが特徴です。
しかし、近年は日本のショッピングサイトに海外の事業者が登録していることもあり、商品が届かなかったり不良品が届く問題が発生しています。
B2Cの仕組み(事業者が個人へ販売)
C2C:ネット上のフリーマーケットや個人が主体のデジタルプラットフォーム
「ヤフオク!」やフリマアプリの「メルカリ」、海外ブランド品を個人間取引する「バイマ」などはC2Cの取引です。
トラブル防止のための取り組みは実施されていますが、個人間での取引なので問題がある出品者も多くいます。
送られてきた商品が写真と違う・偽物だった・送料でクレームになったなど、多くのトラブルが発生しています。
取引場所を提供しているデジタルプラットフォーム事業者は、個人間でトラブルが起きている現状を重くみて、各社対策をしています。
例えば、ブランド品が本物か鑑定するサービスや、代金を提供会社がいったん預かり、購入側が商品の確認をするまで、出品者に代金が払われないサービスなどがあります。
しかし、まだまだ発展途上なので、B2Cの取引と比べるとリスクが高いと言えるでしょう。
C2Cの仕組み(個人から個人へ販売)
ネット売買で起こりがちなトラブル
ネット売買は非常に便利ですが、対面しての取引ではないのでトラブルが発生することもあります。
ここでは、ネット売買でのトラブル例を解説します。
届いた商品の状態が悪かった
届いた商品が破損していたり、汚れていたりする場合があります。
主な原因は下記の2つです。
①出品者が発送する前から破損していた
②輸送中の段階で破損した
いつの段階で壊れていたか判断するのは難しいところです。
梱包している段ボール箱に目立った傷があれば、運送業者に連絡を取りましょう。
もし、段ボールに問題が無く商品だけが破損していたら、発送時には既に問題があった可能性があります。
この場合は、まず出品者に連絡をしましょう。
どちらの場合でも写真を撮って、証拠を残しておくと後で役に立つかもしれません。
ブランド品を購入したら偽物が届いた
近年の偽ブランド品はとても精巧に作られているので、ネット上の写真を見ただけで見破るのは難しいです。
届いた実物を見ても知識がない人だと、偽物だと気が付かずに使ってしまうでしょう。
民間のブランド品鑑定会社を使うのもいいですが、BUYMAは無料鑑定サービスを行っています。(BUYMAで購入したもの限定)
購入したブランド品が偽物か本物か判断が付かなくて不安な時は、鑑定会社や鑑定サービスを利用してみましょう。
お金を振り込んだのに商品が発送されなかった
商品の代金を振り込んだのに、寝ても待てども届かない。
メールで問い合わせをしても返事がない。
ネット売買で悪質な業者に当たってしまうと、このようなことが起こります。
対処法は警察や消費生活相談窓口に相談するしかありませんが、代金の回収は難しいことが多いです。
海外サイトであれば、代金の回収はほぼ不可能だと思っていいでしょう。
そのため、購入前に悪質なサイトを見分ける必要があります。
悪質なサイトの主な見分け方は下記の通りです。
・通販サイトに事業者の名称や住所・電話番号が明記されていない
・日本語におかしいところがある
・支払い方法が前払い等の銀行振込に限定されている
・他のサイトと比べて極端に値段が安い
これらに当てはまれば悪質なサイトの可能性があります。
ネット売買では自分の身は自分で守るようにしましょう。
ネット売買で購入者を保護するための取組
「ネット売買は騙される可能性があるから心配・・」と思われるかもしれませんが、各事業者の取組や法整備が進んでいます。
事業者ごとの取組
ヤフオク!の取り組み
・Yahoo!かんたん決済を使った商品が届かないトラブルを防止
ヤフオク!の取引で「Yahoo!かんたん決済」を使用して支払えば、代金を一時的にYahoo!JAPANが受取り、落札者が商品の受取連絡をした後に出品者に入金されます。
これにより、代金を支払ったのに商品が届かないトラブルが無くなります。
・独自の不正検知システム
ヤフオク!では独自のスーパーコンピューターを使用することにより、偽物出品や不正な出品を検知しています。
ディープラーニングを用いたスーパーコンピューターの不正検知システムは、従来に比べて3.1倍の検知制度となり、不正なものが並びにくい安全なプラットフォームになりました。
BUYMA(バイマ)の取り組み
・無料鑑定サービス
届いたブランド品に不安がある場合は、無料で鑑定サービスを受けられます。鑑定の結果、偽物と判断されたら、BUYMAが購入代金を全額返金します。
・後払い決済
商品が届いて確認をした後に、サイト上で支払いを確定させられます。
お金を払ったのに商品が届かない・サイズや色が違うなどのトラブルを回避できます。
ネット売買の法整備
急激に大きくなるネット売買の市場に、法整備が追いついていないのが実情です。
しかし、市場規模が大きくなるにつれてトラブルも増えているので、政府は「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案」を国会に提出しました。
取引デジタルプラットフォームとは、AmazonやYahoo!JAPAN・楽天市場のような、ネット上での「取引の場」のことです。
この法案では下記の3つを努力義務として、デジタルプラットフォーム事業者に課します。
①出店者と消費者が円滑にやりとりできるようにする
②表示の苦情を受けたら調査する
③出店者に証明書類を提出させるなどして身分確認をする
この法案に罰則は無く、努力義務であるため効果は疑問視されています。
また、この法案はメルカリやBUYMAのような個人間取引は含まれていません。
トラブルが多く起こっている個人間取引こそ、しっかりとした法整備が必要ではないでしょうか。
知らずに誘導されるダークパターンとは
欧米では日本よりもネット売買の法整備が進んでいる国が多いです。
例えば、通販サイトで利用者が無意識のうちに、企業にとって有利な選択をするように誘導する仕掛けを「ダークパターン」といいます。
日本のネットショップではよく見かけるダークパターンですが、欧米では規制の動きが広がっています。
アメリカでは一部の州が、解約手続きの煩雑化などのダークパターンを禁止にしました。また、ダークパターンの通報を受け付けるサイトも登場しているようです。
ダークパターンの例(解約手続きが煩雑)
ダークパターンの例(在庫が少ないことや、閲覧者が多いことを強調する)
まとめ
ITの進化により今後もネット売買の市場は拡大していくでしょう。
しかし、変化が激しいIT技術に、法整備が追いつくのは難しいのが現状です。
自分の身を守るためにも、まずは利用者が知識を付けて不正を見抜けるようになりましょう。
ネット売買は既にインフラともいうべき欠かせないものです。
今後も新たな面白いサービスが続々と登場するでしょう。
トラブルが怖いからと利用を控えるのではなく、自分を守るための知識を身に付けて積極的に利用すれば、生活がより豊かなものになるはずです。