投資ファンドとは?投資信託との違いやメリットデメリットを解説
コラム
近年、iDeCoやNISAなど個人の投資が推奨されているため、「投資ファンド」という言葉を聞く機会が増えました。
また、自分の経営する会社が、投資ファンドの対象となって慌てている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、投資ファンドの種類や、投資を受ける側が上手に投資ファンドを活用する方法を解説します。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
目次
投資ファンドとは
投資ファンドとは、投資家から集めた資金を運用して、利益を投資家に還元する仕組みのことです。
投資ファンドには資金運用のプロである「ファンドマネージャー」が在籍していて、株式や不動産・金など、さまざまなものに投資をしています。
投資ファンドに似た言葉に、投資信託があります。
投資信託は、投資家から集めた資金を運用して、投資家に還元する「金融商品」です。そのため、資産運用・還元する仕組みである投資ファンドの一種が、投資信託といえるでしょう。
公募ファンド
投資ファンドは、「公募ファンド」と「私募ファンド」に分けられます。
公募ファンドとは、不特定多数(50人以上)の投資家から資金を調達する投資ファンドです。銀行や証券会社などの金融機関で販売していて、小額から購入できるものが多いです。
私募ファンド
私募ファンドとは、幅広く出資者を募るのではなく、50人未満に限定された投資ファンドです。プライベートファンドとも呼ばれています。
私募ファンドは一般投資家に販売されることは少なく、基本的には富裕層やプロの投資家向けに案内されます。
投資ファンドの種類
投資ファンドには、アクティビストファンドやインデックスファンドなど、さまざまな種類があります。ここでは、投資ファンドの種類について解説します。
アクティビストファンド
アクティビストファンドとは、投資先の企業の価値を高めるために、積極的に提案やアドバイスをする投資ファンドです。日本では「モノ言う株主」とも呼ばれています。
投資先の企業に対して提案をおこない、企業価値が上がり株価も向上したら、株式を売却して利益を上げます。
インデックスファンド
インデックスファンドとは、日経平均やNYダウなどの指数に投資する投資信託です。
インデックスファンドは運用にかかる費用が少ないため、手数料も低いのが特徴です。また、幅広い銘柄に分散投資でき、値動きが分かりやすいので、初心者向けの投資信託とされています。
近年では、S&P500や全世界株式(オールカントリー)のインデックスファンドが人気を集めています。
REIT(リート)
REITとは運用資金を不動産に投資して、収益を分配する投資信託です。投資先はマンションやオフィスビル・商業施設などさまざまです。
不動産投資はハイリスク・ハイリターンといわれますが、REITであれば分散投資になるため、安定した収益を期待できます。また、小額から投資できるのも嬉しいポイントです。
インフラファンド
インフラファンドとは、電力や水道などインフラ事業へ投資をするファンドです。近年では、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーに投資をするインフラファンドが人気を集めています。
また、日本ではインフラ設備の老朽化が社会問題となっていますが、インフラファンドにより資金が流入すれば、インフラ整備が進むメリットもあります。
バイアウトファンド
バイアウトファンドとは、投資先企業の価値を高めたうえで、株式を売却して利益を上げる投資ファンドです。
アクティビストファンドと似ていますが、バイアウトファンドは株式の50%以上を取得して経営権を握ることが特徴です。
また、アクティビストファンドは比較的短期で株式を売却しますが、バイアウトファンドは長期的な視点で企業価値を向上させるという違いもあります。
企業再生ファンド
企業再生ファンドとは、経営破綻となった企業に投資をして、事業を再生した後に株式を売却して利益を得る投資ファンドです。経営が立ち行かなくなった企業を安価で買い取るため、「ハゲタカファンド」と呼ばれることもあります。
企業を再生させる手法としては、以下の2つがあります。
- ターンアラウンド:事業の内容を方向転換して再生を図る
- ワークアウト:リストラや事業規模の縮小をおこない再生を図る
企業再生ファンドには、地域の金融機関や官民が共同で出資するものもあります。そのような企業再生ファンドは、中小企業の支援をメインとすることが多いです。
ファンドオブファンズ
ファンドオブファンズとは、複数の証券会社の投資信託に投資するファンドです。
複数の投資信託に投資することで、より広範囲に分散投資ができ、リスクを抑えられます。
ただし、投資信託を購入する際のコストに加えて、ファンドオブファンズに対してのコストも発生するため、手数料が二重にかかるデメリットがあります。
投資ファンドを活用するメリット
ここでは、投資される企業側の視点から、投資ファンドを活用するメリットを解説します。
事業継承がスムーズになる
日本では経営者の高齢化により、跡継ぎ不在となり、事業継承ができないケースが多くあります。
投資ファンドには経営のノウハウを持った人材が豊富なため、経営を任せることも可能です。
ただ、投資ファンドのメンバーは、事業の効率化や短期的な目線で経営をすることが多いです。投資ファンドから声が掛かったら、経営に対する考え方や、事業の企業風土と合致するか判断することが大切です。
資金調達できる
投資ファンドは対象となった企業に資金を投入するため、事業を運営するための資金調達が可能です。
経営が傾いていたり、新興で実績がなかったりすると、金融機関から融資を受けるのは難しいため、投資ファンドが有力な資金調達先になるでしょう。
経営に関するアドバイスを受けられる
投資ファンドは経営のプロ集団ですので、自社の経営を改善するためのアドバイスを受けられます。
さらに、投資ファンドのネットワークを駆使して、相乗効果が出そうな企業を紹介してくれるケースもあります。
専門的な知識をもとにしたアドバイスを受ければ、短期間での経営改善を見込めるでしょう。
投資ファンドのデメリット
投資ファンドを活用するには、メリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、投資ファンドを受け入れるデメリットを解説します。
人員整理の可能性がある
企業価値を向上させるために、投資ファンドは人員整理を実施するケースが多いです。
人員整理をおこなうと、短期的な経営合理化により利益が増えて、高値で株式を売り抜けられるためです。
また、人員整理がおこなわれなかったとしても、コスト削減の徹底や実力重視の評価に変わるなど、企業文化が大きく変わるでしょう。
従業員が不満を抱く可能性がある
投資ファンドが合理化により経営改革を進めた結果、従業員が不満を抱いて離職率が上がる可能性があります。
また、投資ファンドは企業価値が向上した後に株式を売却したら、経営陣は交代となります。大きな変化に対応できない従業員が増えて、経営環境が悪化する可能性が高いでしょう。
まとめ
投資ファンドとは、投資家から集めた資金をさまざまな対象に投資をして、利益を投資家に還元する仕組みです。
投資ファンドには、不特定多数の投資家から資金を集める「公募ファンド」と、50人未満の限られた投資家から資金を集める「私募ファンド」があります。
その他にも、投資先の企業に対して積極的に提案をするアクティビストファンドや、不動産に投資するREIT・インフラに投資するインフラファンドなど、多くの種類があります。
投資を受ける側としてファンドを活用すると、資金調達ができ、経営に関するアドバイスも受けられるメリットがあります。また、後継者不足に悩んでいる場合は、プロ経営者に経営を譲ることも可能です。
ただし、経営合理化のために人員整理が実施されたり、従業員が不満を持ち離職率が高まったりする可能性があります。
メリットとデメリットを把握したうえで、上手に投資ファンドを活用してください。