特定商取引法の表示項目とは?具体例で分かりやすく解説!
コラム
ネットショップや訪問販売をおこなう事業者は、特定商取引法を遵守することが大切です。
しかし、最近は簡単にネットショップを開設できるため、知識が不十分で違法な状態になっているケースも目立ちます。
今回は、特定商取引法の概要やECサイトに表記する項目などについて解説していきます。
この記事は20年以上金融サービスを提供してきたソモ㈱が執筆しています。
弊社のホームページはこちらです。
目次
特定商取引法とは?
特定商取引法とは、事業者と消費者の間でトラブルになりやすい取引について一定の制限を加えることで、消費者を保護する目的で作られた法律です。
この法律で対象となる取引は、以下のように定められています。
①訪問販売
②通信販売
③電話勧誘販売
④連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)
⑤特定継続的役務提供(エステ・美容医療・学習塾・結婚相談所など)
⑥業務提供誘引販売取引(仕事に必要として商品を購入させる)
⑦訪問購入(不用品の買取など事業者が店舗以外で消費者から購入する取引)
訪問販売やマルチ商法は昔からたびたび問題となっていますが、通信販売は比較的新しい分野だと言えます。
実店舗メインで販売している会社でも、インターネット通販をおこなっているケースが多いため、特定商取引法の対象となる会社はかなり多いと言えるでしょう。
特定商取引法の行政規制
行政規制とは、私人の権利や自由を制限して公共の目的を達成するための規制です。
ここでは、特定商取引法で定められている、主な行政規制について解説します。
氏名等の明示
事業者は勧誘を始める前に、会社名や氏名・勧誘目的であると消費者に告げることが義務付けられています。ネットショップなどのECサイトであれば、サイト内での明示が必要です。
広告規制
事業者が広告を出稿する際には、返品特約など重要事項の表示を義務付け、さらに虚偽・誇大広告を禁止しています。
不当な勧誘行為の禁止
価格や支払条件について虚偽の説明をしたり、故意に告知しないことを禁止しています。
また、消費者を威圧して、正常ではない精神状態に追い込んだうえでの勧誘も禁止です。
書面交付義務
契約時に、重要事項を記載した書面を交付することが義務付けられています。
これまで通信販売を除き紙ベースでの書面交付が必要でしたが、2022年6月の法改正によりその他の契約でも、消費者に承諾を得たうえでデジタルでの書面交付ができるようになりました。
特定商取引法の民事ルール
民事ルールとは、事業者と消費者のトラブルの防止と、トラブルが発生した際の救済を容易にするためのルールです。
ここでは、特定商取引法で定められている、主な民事ルールについて解説します。
クーリング・オフ
クーリング・オフとは契約を締結した後でも、一定期間内であれば無条件で契約解除できる制度です。
以前は書面によるクーリング・オフの通知が必要でしたが、2022年6月の法改正により、メールなどの電磁的記録でも通知ができるようになりました。
クーリング・オフができる期間は、法律で定められた書面を受け取ってから8日または20日です。
8日:訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入
20日:連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引
*通信販売についてはクーリング・オフ制度は定められていません
意思表示の取消
事業者が支払い条件や価格について嘘の説明をしたり、あえて告知をしなかった場合には、購入の意思表示を取り消すことができます。
損害賠償等額の制限
消費者が途中で契約を解除した場合に、事業者が請求できる損害賠償の金額が制限されています。
損害賠償の上限は次のように定められています。
①商品(権利)が返還された場合は通常の使用料の金額
②商品が返還されない場合は販売価格に相当する金額
③提供したサービスに相当する金額
④商品をまだ渡していないのであれば、契約の締結や履行にかかった金額
上記の金額に、法定利率による遅延損害金が加算されます。
特定商取引法の罰則
特定商取引法に違反すると、次のような行政処分を受ける可能性があります。
・業務改善指示
・業務停止命令
・業務禁止命令
これらの処分を受けると消費者庁のホームページで、会社名・処分の内容が公表されます。
ホームページで社名を公表されてしまうと、取引先や消費者などさまざまな人に法令違反があったことを知られてしまうでしょう。
その結果、取引先が離れていってしまい、業績が大幅ダウンする可能性もあります。
また、悪質なケースでは、3年以下の懲役といった刑事罰を言い渡されることもあります。個人事業主であれば300万円以下の罰金、法人であれば3億円以下の罰金という罰金刑も定められているので注意が必要です。
実際に平均すると毎年100社以上が社名を公表されて、中には逮捕された事例もあります。
特に虚偽説明をする「不実の告知」は処分が重くなる傾向にあり、いちご棚の売上を水増しして権利を販売した事件では、4,980万円の賠償命令が下されました。
特定商取引法に基づく表記のページに記載するべき項目
ECサイトを運営する上で、特に注意する必要があるのは「氏名等の明示」です。
ECサイトには特定商取引法で定められた内容を、サイトの上部であるヘッダーや下部のフッターなどに分かりやすく表示することが求められます。
事業者の氏名・住所・電話番号
個人であれば戸籍上の氏名か商業登記簿に記載された商号、法人であれば登記簿上の名称を記載します。
通称や屋号・Webサイト名などは不可です。
住所は現に活動している場所を記載し、電話番号も連絡が取れる状態の番号を記載することが求められます。
電話を取りたくないからといって、電話を無視していると特定商取引法違反となる可能性があります。
販売価格
商品そのものの販売価格を表示し、消費税を徴収する場合は消費税を含んだ価格となります。
送料
販売価格に送料が含まれていないのであれば、送料は別途表示する必要があります。
販売価格のみ表示されている場合は、販売価格に送料が含まれていると推定されます。
例①:全国一律〇〇円
例②:〇〇円(北海道)、〇〇円(東北)など
発送元地域と重量・サイズを明記していれば、運送会社Webサイトの料金表のページにリンクを貼っても問題ありません。
不良品の交換の条件など
販売した商品の種類や品質が契約と異なる場合に、事業者の責任について定めているのであれば条件を表示します。
事業者の責任について定めがないのであれば、民法の一般原則が適用されます。
例:商品に欠陥がない場合でも、〇日以内であれば返品可能です。欠陥がある場合の送料は当方の負担、欠陥がない場合は購入者様の負担となります。
支払時期と支払方法
代金の支払い方法は、すべて表示させることが必要です。
代金引換や銀行振込・クレジットカード・現地決済など、対応している決済方法をすべて記載しましょう。
支払時期は銀行振込やコンビニ払いなどの場合に、前払いか後払いかを明示して、いつまでに支払いが必要かを記載する必要があります。
これらは特定商取引法で表示が定められている項目の一部なので、詳しくは「特定商取引法ガイド」をご覧ください。
まとめ
特定商取引法は事業者と消費者の間でトラブルが起こりやすい契約について、一定の制限を加えることで消費者を救済することを目的としています。
特定商取引法では不当な勧誘行為の禁止やクーリングオフなどが定められていて、違反すると行政罰だけでなく刑事罰に処せられる可能性もあります。
近年では、自社のECサイトを運営している企業も増えているので、多くの企業が対象となる法律です。
知らずのうちに違法なことをしていたという可能性もあるため、特定商取引法の基礎知識を身に付けて事業を運営していきましょう。